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嫌いなたべものはありますか?
そのたべものは、家族みんなが嫌いですか?
たいていの場合、たべものの好き嫌いは完全には一致しません。むしろ「私は嫌いだけど家族は大好き」なんてこともあるのではないでしょうか?
同じものを食べても、おいしいと感じる人と不味いと感じる人がいる。ものが変わったわけではなく、それを食べる人の感覚がちがうからこういうことが起こる。誰でも経験するとってもあたりまえの現象です。
でも、私達は意外とこれを見落としがち。
「おいしく食べられるけど嫌い」なんてレアケース。基本的には「不味いから嫌い」です。それは好みというより「感じ方」の話です。
同じように、光や音、肌触りも「わたしにとっては心地いいけど、どうやらあの人には不快みたいだ…」なんてことがある。感覚過敏と言われるもので、定型発達の人でもこれに悩む人は少なからずいます。
今日はそんな、感覚のちがいにまつわるお話を書いてみようと思います。
1.はじめに
わたしは今、職場でこのブログを書いています。窓をあけているので風の音も遠くを走る車の音も聴こえます。曇っていて薄暗いので普段よりすこしだけ照明を強くしています。
が…
聴覚過敏の人にとっては、風や遠くの車の音が「新幹線がホームを通過する騒音」のように感じられたりする。いつもより少し強い照明が「正面からサーチライトを当てられてる」ように感じる人もいる。
これは好みの問題ではなく、そう「感じる」という感覚の問題です。
多くの人が違和感なく過ごせる場所で、音や光に痛みや不快さを感じてしまう…それはもしかしたら「みんなは美味しそうにたべてるけど、私の嫌いなものしかない」みたいな感覚かもしれません。
嫌いなものを口に放りこまれて「おいしいでしょ?不味いのは気のせいだよ」と言われても苦痛しかない。だから「慣れ」や「気持ち」ではなく、現実的に負担を軽減することが大切なのです。
2.感覚過敏と自閉症
感覚過敏は定型発達の人にも見られるものですが、特に自閉症の人に多いようです。
自閉症の特性ゆえに人と関わるのが苦手…。さらに、感覚過敏があるからその場(学校や職場など)にいるのが苦手…だとしたら、その生きづらさはとても大きなものかもしれません。
3.代表的な対応例
(1)触覚過敏
衣類の肌触りが苦手な子がいます。その場合は素材を変えるとよいかもしれません。同じようなデザインでも素材を変えると着てくれたりします。服を購入する際には、デザインだけでなく肌触りを重視してみましょう。
また
服のタグが肌にあたるのが苦手な子もいます。新品の服のタグを切るのは抵抗感があるかもしれませんが、切ることでお子さんが安心して着られるなら、きれいに切り取ってしまうのがよいかもしれません。
(2)聴覚過敏
音の大きさだけでなく、距離による違いを聞き分けられないことも多いようです。また、風が通り過ぎる音を「黒板をひっかく音」のように極めて不快な音として聴いてしまう人もいます。
とはいえまずは音量を調節することが一般的。イヤーマフや耳栓がよいでしょう。いずれも耳に装着するものですから、つけ心地も大切になります。少しずつ試してみて、本人が安心してつけていられるものを探すとよいでしょう。
Amazonなどでも探すことができます。
(3)視覚過敏
北欧など瞳の青い人たちは日本人に比べて太陽光が苦手だと言います。欧米人がサングラスをかけていることが多いのはそのためです。
感覚過敏で光が苦手な子は、サングラスをかけることで負担を軽減できるかもしれません。
(4)敬遠しがちだけど…
いずれも、感覚過敏でない人にとっては奇異に映ることがあるので「恥ずかしい」「社会生活に支障が出る」などの理由から敬遠されがちな対策ですが、基本的には採用すべきものです。
たしかに冠婚葬祭の場面でヘッドフォンやサングラスをつけていたら奇異にうつるかもしれませんが、お子さんはそんな非日常を考える段階ではなく、今日明日の日常に生きづらさが大きいのです。
日常のつらさを軽減しない限り、本人の成長・発達も期待できず、今とおなじ状況が延々つづくことになってしまう。お子様が受け取る刺激を調節してあげることをぜひ、前向きに検討されるとよいでしょう。
3.家庭でできる環境調整
〜照明・音・色彩・温度への配慮〜
家庭でできる環境調整も数多くあります。例えば、照明については、自然光を多く取り入れるか、調光可能なLEDライトを使用すると良いでしょう。同じ強さでも色味が変われば感じ方が変わるかもしれません。
また
静かな環境を保つために、音の少ない家電製品を選ぶ、部屋の色彩を落ち着いたものにするなども効果的です。
騒音を抑えるために、椅子やテーブルの脚にフェルトなどをつけるのも良いでしょう。食卓では、ステンレスなどの大きな音が出やすい食器を避けることが考えられます。
壁のポスターや写真なども場合によっては視覚刺激として強すぎる可能性があります。お子さんの部屋は可能な限りシンプルな構造にしてあげると落ち着けるかもしれません。
4.まとめ
安心安全な環境で、落ち着いて過ごせてはじめて人は能力を発揮し、成長することができます。
あえて集中できない環境で勉強させる必要はありませんし、しんどい環境でどんなトレーニングをしても効果は生まれません。お子さんの感覚過敏に配慮し、日常生活の環境を調整することを大切にしていただけたらと思います。
こどもたちが日々の生活を楽しみ、新たな可能性を広げられるよう、私たちも情報を提供し続けます。皆さんの日々の努力と愛情に敬意を込めて。
最後までお読みいただきありがとうございました。
追伸
こちらのサイトも参考になります。
感覚過敏研究所 https://kabin.life/
キッズランドまめの木は、茨城県県南地域(石岡市・土浦市・小美玉市・行方市)に複数の施設を運営しています。医療ケア児にも対応。保護者のお悩み相談に対応するカウンセラーも配置しています。 ぜひ一度、まめの木までお問合せください。 相談支援専門員や公認心理師が対応させていただきます。
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